「マンションを売りたいけど、今人に貸しているからなあ……」「そもそも人が借りているのに、売っても大丈夫なの?」このようなお悩み、疑問を抱えている大家様は多いようです。
今、人に貸している物件の売り出しをご検討中の場合、このような疑問が浮かぶのは当然です。現状で物件を人に貸している状態でも、売り出すこと自体は可能です。しかし物件の買い手が見つかったとき、今の借主からどのように引き継ぐのかなど、気になる点も多いもの。
そこで今回は、賃貸中でも売却したい場合に知っておくべき情報をまとめてみました。物件を売りたいと思っているオーナー様は、ぜひこれからご紹介する内容を参考にしてみてください。
目次
今の時点で人に貸している物件、つまり賃貸中の物件でも売却自体は可能です。賃貸中の物件を売却する方法は、2通りあります。1つ目は賃貸中のまま物件自体を売却する方法、もう1つは居住者にいったん退去してもらって、空き家にしてから売却する方法です。
どちらにもメリットやデメリットが存在します。ではそれぞれの方法のメリットやデメリットについて、詳しくお伝えしていきましょう。
賃貸中のまま売却をする方法は、大家様にとって最も売りやすく手軽なやり方といえます。
ただし、売却価格は現状の家賃収入に比例する傾向があるということは知っておくべきです。不動産の価格というのは通常、収益還元法によって決められます。収益還元法とは、不動産鑑定士によって不動産の将来的な利益を査定してもらい、その利益分を考慮して今の適正価格を決めていく方法です。
将来的な収益が低いと判断されれば当然査定価格も下がり、収益が高いと判断されれば査定価格は上がります。そのため今の時点で入居者からの家賃収入が低ければ、将来的な利益も低いと判断され、売却するときの価格も安くなりがちになってしまいます。
もう1つの方法は、空き家にしてから売却するという方法です。これは今の入居者が退去をしてくれるまで待つ必要があり、すぐに実行できるわけではありません。しかし空き家になってから売ったほうが、売却価格を上げることは期待できます。
「取引事例比較法」をご存知でしょうか? 取引事例比較法とは、日本で主に使われている不動産評価方法です。対象となる不動産と条件の似ている別物件を探し、その評価を参考にする方法です。すぐにざっくりと大まかな評価額が算出できて分かりやすいため、広く使われています。
空き家にしてから売却をすれば、取引事例比較法で比較をしやすいですし、買い手も見つかりやすく売却価格も賃貸中より高く見積もられる傾向があります。
ただし、今の居住者が退去してくれるまで待たなければならないのがネックです。また借主には借りている物件に住む権利が保証されており、いわゆる立ち退き料が必要となることも多いです。そのため居住者に退去をお願いすると精神的、金銭的な負担が余計にかかってしまいます。
賃貸中物件の売却方法としては、「オーナーチェンジ」と呼ばれる方法があります。これはつまり、投資用の物件のオーナーが変わることです。
オーナーチェンジとは簡単に言うと、物件の所有者だけが変わることです。その物件に入居している人はそのままの状態で、オーナーだけ違う人に受け継がれます。入居者が退去して空室になった状態で物件を売却に出すのであれば、それは普通の売却と同じことです。
オーナーチェンジ物件を売却することも、いくつかの問題点を抱えています。以下の点が、オーナーチェンジ物件の売却の際に問題となります。
・現在の入居者の退去問題
入居者がいる状態で、退去を迫るのはなかなか難しいものです。次の更新年にちょうどキリがよいからといって退去をしてほしいと思っても、うまく次の住居が確保できるとは限りません。
新しい住居が見つからなければ、入居者の生活拠点が確保できないことになってしまいます。この場合、法律的には大家様よりも入居者の権利が強くなり、売主が次の買主に売却したいからといって退去をさせるのは無理があるのです。
・内覧ができないかもしれない
次の買主が部屋を内覧したいと思っても、今の入居者に内覧を拒否されてしまったら内覧はできません。
その物件の大家様といっても、入居者の許可なく部屋の中に入ることは法的に許されません。入居者が部屋の中に立ち入ることを許可しなれば、売却がスムーズには行かないでしょう。
・一般人が購入しにくい
上記2つのような問題点に加え、オーナーチェンジ物件を購入しようと思っても買主は住宅ローンを使えないという点も問題です。なぜなら住宅ローンというものは、居住用の住宅にのみ使えるローンだからです。
オーナーチェンジ物件をローンで購入しようと思ったら、不動産運用用のローンを使う必要があります。それには、より金利の高い投資ローンなどを使うしかありません。そのため一般人が賃貸中マンションを買うことは、めったにないのです。
・売り主の義務や負担も次の家主に受け継がれる
劣化したマンションの修繕の義務や管理会社への委託料など、オーナーとしての責任も当然次の家主に引き継がれます。投資用不動産を購入すれば家賃収入が得られますが、家主としての責任も引き継がれることを知っておきましょう。
もう1つの方法としては、投資用としてではなく、居住用の物件として一般の入居者を募集するものがあります。投資用としてよりは、入居者を見つけやすくなります。ただし、居住用として売却するにも知って置かなければならないことがあります。
居住用として売り出す場合、今住んでいる人に退去のお願いをする必要が出てきます。普段から入居者のトラブル対応などをしっかりしていれば、話が聞いてもらえる可能性もあるでしょう。
退去してもらえるにしても、更新月の1年~半年前には事情を話しておかなければ法律的にも引っかかってきます。無理に話を進めると、裁判になることもありますので慎重におこなうことが大切です。
今住んでいる人が部屋を気に入っているようなら、その部屋を購入してもらうという方法もあります。長い目で見れば住宅ローンを使って購入したほうが、賃貸で暮らすよりもトータルの費用が抑えられます。
そのため今の部屋を長く住む予定のある入居者には、購入の話を切り出してみるのもよいでしょう。
物件購入の際に内覧ができないとなると、今の時点で部屋がどのような状態なのか把握することができません。部屋が汚なくないか、備品が故障しているかどうかなど確認ができないので、修繕費用をめぐってトラブルになる可能性も秘めています。
そのような責任の所在をはっきりさせて、書面で残しておくことが必要となってくるでしょう。
オーナーチェンジ物件のように、大家様にとって売りにくい物件をどうしたら高く売ることができるでしょうか。少しでも高く売るためには、複数の不動産会社から査定をしてもらうことです。
インターネットの一括査定サイトを使えば、複数の不動産会社から一括査定をしてもらえます。物件の情報を入力すると、査定をしてくれる不動産会社が簡単に見つかるので大変便利です。
より高額で査定をしてくれた不動産会社が見つかったら、査定額の理由を担当者に聞いておきましょう。はっきりとした理由があれば、契約後に安く売り叩かれるリスクを減らすことができます。
その不動産会社の担当者に不動産売却に関する知識や経験があることも、大切なことです。実際に複数の担当者と話をしてみて、信頼できそうな会社を選びましょう。
マンションを賃貸のまま売り出すとなると、さまざまな問題が発生するものです。入居者がいる状態では、内覧もままなりません。また居住用でない住居を買うには金利の安い住宅ローンが使えない、というデメリットもあります。
そんな中でもより高く物件を売却したいという大家様は、複数の不動産会社から一括査定をしてもらうとよいでしょう。
インターネットの情報だけでなく、実際に担当者と話をしてみて信頼できるかどうかを判断することも大切です。次のオーナー様にスムーズに売却できるよう、この記事でお知りになったことを活かしていただければ幸いです。